Wire Work Embroideryt「ワイヤーワークの花刺しゅう」とは、
布にワイヤーを止めつけ、
その上に刺繍をしてカットし、
立体の花に成形する
「アトリエFil」オリジナルの技法です。
Wire Work Embroideryの材料について
「糸」のこと
糸は、いろいろな素材のものを使います。
刺繍に一般的に使われている25番糸は、色数が多いし、メーカーごとに少しずつ色味が違うので、微妙なニュアンスが出せます。メーカーの色見本帳ももちろん利用しますが、実際に同系色の糸を集めて3人で話し合いながら濃淡を決める方が、立体的な色調を出せる気がします。
ウール糸は、素材の持つ暖かさに加え、ボリューム感が出るので、大きな作品ができます。今はなくなってしまいましたが、DMCのメディシスウールは、色も美しく、よりの強さも適度で、よく使いました。ウール糸はどうしても色が沈むのですが、シルク混のモヘヤ糸(ハマナカ・ハースローブ)を合わせると、色が鮮やかになります。
コサージュを作るとき、私たちが一番魅力的だと思った糸は、アメリカのThread Gatherer社のSilk'n Colorsという100%シルクの糸でした。シルク独特のきしみ感があり、艶やかで刺しやすい糸です。段染めですが、手染めなのでグラデーションが自然で、花びらを刺すには適しています。日本で入手できないのが残念です。
まだまだ、世界中には美しい刺繍糸がたくさんありますから、探して使ってみたいなと思っています
「布」のこと
Wire Work
Embroideryには、土台になる布が必要です。私たちは長年フランス刺繍をやってきたので、扱い慣れている「クラッシー」という刺繍用麻布を使ってきました。針の通りも、厚さも、張りも申し分ないのですが、染色をすると多少堅くなって、針の通りが悪くなるのが悩みでした。1つ、2つはともかく、大量に刺すとなると指先に穴があいてしまいます。2006年4月に〈素晴らしき刺繍の世界展〉で出会った、麻布館というメーカーの薄麻は、クラッシーに比べると薄手で柔らかいのですが、染色をしても堅くならないのが救いで、私たちは今、コサージュ以外の大部分の作品に、この布を利用しています。
「染色」のこと
土台になる布にあらかじめ色をつけておくと、作品の仕上がりがきれいになります。
この、布の染色方法も試行錯誤でした。ダイロンなどの染料は大量の物を染色するのには適していますが、15㎝四方の布を一つひとつ色味を変えながら染色していくのには不向きです。アクリル絵の具は手近でよいのですが、乾くまで発色の具合がわかりません。そこで、当初は水彩色鉛筆を使っていました。これだと、色を混ぜることもできますし、色鉛筆のままでも、水をつけても使えます。ただ、これで15㎝四方の布を塗るには、逆に手間がかかります。
あるとき、文具売り場でコピック・スケッチというイラスト用のマーカーを見つけました。漫画家やイラストレーターが使うものです。試してみたところ発色も良いしアルコール系で乾きも早い、色数も144色と多いということで、今ではこれを使っています。
「ワイヤー」のこと
WIre Work Embroideryでは、土台になる麻布にワイヤーを糸で止め付けていきます。
ワイヤーは、アートフラワー用の30㎝くらいにカットしてある物、ビーズ手芸用に巻いてある物などがありますが、私たちはほとんど巻きになっている物を使用しています。色も番手もいろいろな物がありますが、シルバーの30番を使うことが多いです。土台の布がオーガンジーのように繊細な物の時は34番を使ったりします。